さてところで筆者は最近かの〈王・力〉⦅ワン・リー⦆作のかの《同源字典》⦅ドウゲンジテン⦆にぱらぱらと目を通していました。
〈王・力〉⦅ワン・リー⦆はなんか少し前の世代の〈中国〉人の〈中国〉語の偉い先生みたいです。
《同源字典》⦅ドウゲンジテン⦆はかの〈中国〉語の単語また引いてはその〈中国〉語の単語を表わすかの表単語文字たる〈漢〉文字の中で互いに同根のものはどれかについて考えるものです。
それらの〈中国〉語の単語や〈漢〉文字などのその互いの同根性について考える場合いには次の3つの場合いが考えれます。
1、互いに同一の発音符を持っているもの
これはたとえば発音符の〘肖〙を持つものとしてたとえば「宵」⦅ショウ、よい⦆、「屑」⦅セツ、くず⦆、「硝」⦅ショウ、すな⦆、「蛸」⦅ショウ、たこ⦆、「鞘」⦅ショウ、さや⦆、「消」⦅ショウ、シャク、きえる、けす⦆、「削」⦅サク、けずれる、けずる⦆などのようなものです。
2、互いに同一の意味符を持っているもの
これはたとえば意味符の〘言〙を持つものとしてたとえば「語」⦅ゴ、ことば⦆、「説」⦅セツ、ゼイ、ゆう⦆、「話」⦅ワ、はなす⦆、「記」⦅キ、しるす⦆、「認」⦅ニン、みとめる⦆、「託」⦅タク、あずかる、あずける⦆、「誇」⦅コ、ほこる⦆などのようなものです。
3、文字形、文字文様に関係なく発音と意味がどちらも互いに1致、近似しているもの
これはたとえば発音の「ソウ、ゾウ」と意味の「くら」を持つものとしてたとえば「倉」⦅ソウ、くら⦆、「蔵」⦅ゾウ、くら⦆などのようなものです。
《同源字典》⦅ドウゲンジテン⦆はその中でも特にその内のその3つ目の「文字形、文字文様に関係なく発音と意味がどちらも互いに1致、近似しているもの」に注目します。
〈中国〉語、〈漢〉文字はそもそも文字言語である以前に音声言語なのでその音声言語としての〈中国〉語、〈漢〉文字に注目して単語、文字のその互いの同根性について考えようというわけです。
またその3つ目の「文字形、文字文様に関係なく発音と意味がどちらも互いに1致、近似しているもの」は時として「文字形、文字文様に依らない単語家族、文字家族」などと呼ばれたりすることもあります。
《同源字典》⦅ドウゲンジテン⦆はその構成としてはその冒頭の100ページ未満ほどでその全体の概要とある種の理論的な導入があって後はひたすら互いに同根の疑いがある〈漢〉文字たちが次々と怒涛のように挙げられていくというものです。
〈王・力〉⦅ワン・リー⦆も言う通り《同源字典》⦅ドウゲンジテン⦆は〈中国〉語の古典の「訓詁学的な」⦅クンコガクテキな⦆すなわち「意味注釈的な」⦅イミチュウシャクテキな⦆伝統の上に書かれているものなのでその結論は極めて穏当なものでありその文献上の出典上の寄り所の確実性も極めて高いものとなっています。
しかしまたその1方でその分、目新しい独創的な発想などには乏しくちょっと考えればすぐにわかるような常識的な内容の項目も多いです。
また現代の普通の日本人からすると今ではほとんど使われないような珍しい〈漢〉文字も多くてあまりためにならない部分も多いかもしれません。
しかしそれでもいくつか確かに光る部分はあって筆者も特にたとえば「青」⦅セイ、ショウ、ジョウ、あお⦆と「蒼」⦅ソウ、あお⦆、「壁」⦅ヘキ、かべ⦆と「屏」⦅ヘイ、ビョウ、かべ⦆、「育」⦅イク、そだつ、そだてる⦆と「畜」⦅チク、そだつ、そだてる⦆などのような組みには大いに開眼さされて大いに瞠目さされました。